ゐるよ。馬鹿だねえ。
声 (階下から女将)秋ちやん! お客さんだよ。秋ちやんてばさ。
お秋 はーい。さあ忙しいぞ。
弟 さうなつたら、あん畜生! さうなつたら、俺、姉さんの肩をもんでやるよ。ね、姉さん。
お秋 あゝ――さうなつたら――もんで貰ふわ。(身じまひをする)
弟 さうなつたら、――さうなつたら。
[#ここから2字下げ]
お秋、手廻りのものを片附けながら、静かに微笑してゐる。
[#ここで字下げ終わり]
お秋 そんな事をグズグズ言つてゐないで、仕事をおしよ。(階下へ)はーい、ただ今。
[#ここから2字下げ]
やがて三畳の紙の音。間。
[#ここで字下げ終わり]
[#地から1字上げ]――幕――(一九二八・六)



底本:「三好十郎の仕事 第一巻」學藝書林
   1968(昭和43)年7月1日第1刷発行
底本の親本:「炭塵」中央公論社
   1931(昭和6年)
初出:「戦旗」
   1928(昭和3年)8〜11月号
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
※アキ、句点の有無、字下げ、ダッシュの長さ、仮名・漢字表記のばらつき、新字
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