。外に出て話をつけようぢやないか。
町田 外へ? どうするんです?
杉山 外へ出て、二人で話を附けようと言ふんだよ。
[#ここから2字下げ]
町田、助けを乞ふ様に、お秋を見る。
お秋、黙つて表情を変へぬ。
[#ここで字下げ終わり]
杉山 出ようぢや無いか。
町田 えゝ、そりや、行きますけど――。
[#ここから2字下げ]
再びお秋を見るが、お秋は黙つてゐる。
[#ここで字下げ終わり]
杉山 行けないのか?
町田 行きますよ。
[#ここから2字下げ]
杉山、扉を押して外に去る。町田も続いて消える。少し足がヨロヨロしてゐる。お秋、二人の去つた扉をヂツと見詰めてゐる、――間。
[#ここで字下げ終わり]
声 (二階の口から弟の)姉さん、姉さん、姉さん! 姉さん! 阪井さんは居ないぜ。
お秋 ――。
声 姉さん、何をしてゐるんだよ? まだ寝ないの? どこにゐるんだい、阪井さんは?
お秋 ――。
[#ここから2字下げ]
足音、弟が降りて来る。
[#ここで字下げ終わり]
弟 何をしてゐるの? 姉さん? 何処にゐるんだい?
お秋 恵ちやん、まだ寝ないのかい?
弟 姉さんこそ、何をしてゐるんだよ? 阪井さんは二階にはゐないぜ、此処に居るんだらう?
お秋 いゝえ、此処には居ないよ、どつか便所にでもゐるんだろ?(阪井動かない)
弟 はは、隠してら。はづかしいもんだから隠してら。
お秋 何を言つてるんだよ、子供のくせに。早く行つておやすみ。
弟 姉さんは?
お秋 (立上つて、扉を閉める)私も寝るよ。さあ、――沢ちやんは?
弟 沢ちやんは、何だか又下腹が痛いつて苦しがつてゐるよ。阪井さんは?
お秋 いけないねえ。ぢや、行つて見よう。阪井さんは二階の納戸《なんど》か便所だろ。心配しないでいゝよ。
[#ここから2字下げ]
弟の手を取つてやつて、一緒に階段を昇りながら、
[#ここで字下げ終わり]
それ、用心しないと、踏みはづすわよ。又、転げ落ちるわ、こないだの様に。いゝかい。
弟 大丈夫だつたら。――姉さんの手は今夜ひどく冷たいねえ。
[#ここから2字下げ]
二人階上に消える。阪井動かず。電燈だけ明るい。
間。
扉の外(舞台奥)に三四の足音。
[#ここで字下げ終わり]
声 おい開けてくれ! 開けてくれ! おかみさん、お秋ちやん! 開けてくれ! 阪井君を出してくれ。阪井君を迎へに来たんだ! 開けてくれ
前へ
次へ
全41ページ中28ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング