したら、ダメだよ。わかったかよ?
そめ あい。
かつ 鼻紙は持ったなあ! と、これが下駄。(カタリと両方を合せてから、土間におろす)ホントにまあ世話が焼けると云うたら! 行かせねえと五日も六日もボーッとしてなんにも手が附かねえんだから、しかたが無え、行くのも良いけどよ、おらも源次郎も、なんぼ世間に恥かしいか知れないぞ伯母さん。
そめ あい。
かつ ちっ、なんにも聞いちゃいねえ。まあま、しよう無え。あい、ベントウだ。おひるになったらチャンと食べるだよ。
そめ おかつや、あの、鈴取っておくれ。仏壇だ。
かつ 又、鈴か、あれだけは忘れねえだなあ。しょうむ無え……(小走りに畳をふんで仏壇から小鈴の束を取って来る。コロコロという音)……そっちい向くだ。帯の横にこうして、ゆわえ附けて、と……早く帰って来るだよ。又、おそくなっても、今日は一日アゼ豆の植え込みで忙しいから迎えにゃ行かねえからな、あい、むすべた。
そめ そいじゃ、行って来やす。(歩き出す下駄の音と鈴の音)
かつ (その後ろ姿へ)人に何か聞かれたら、鷲山の荒木源次郎の嫁のおかつの伯母ですと、そんだけ云うだ。グジャグジャからかわれても相手に
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