断絶? うむ。
舟木 無数の断絶者が生れつつある。この世の、崖っぷちのこっち側の考えで、死んでるとか生きてるとか言って見ても無駄。どうするかだ、これを?
私 どうするか?
舟木 殺しても死なない、だから。だから処理するだけだ。警察に渡すか、精神病院に渡すかだ。
私 あぶない。ピストルを持っている。
舟木 ピストルには弾はいくつ入っている?
私 六連発と見ても、まだ四つ入っている可能性。
舟木 良い青年だがな。
私 良い奴だ。しかし犯罪者。
舟木 犯罪者? 犯罪の意識は無い。
私 狂人か――
舟木 われわれにとって狂人と言うものは居ない。時代時代の平均ノルムが有るだけ。それを踏みはずしたのを仮りに狂と名づける。セーンもインセーンも無い。どの試験管もガラスで出来てる。
私 だが、須永は犯した。これからも犯し得る。これは、怖い。
舟木 怖いのは、しかしホントに怖いのは、実はモモコだ。あの子は笑いながら一万人だって殺すことが出来る。
私 うむ。しかしモモコは殺してない。須永は殺した。
舟木 薬をあげようか?
私 自分でも持っているのではないか。それよりピストル持ってる。自殺など胴忘れしてああし
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