までが、日常生活のものうい夢から叩き起され、眼をさましたのではないのか? ……そうだ、現に私だ。私は半分死んでいるのだと須永は言った。そうかもしれない。お前はここに私のそばに立っている。もう既に死んでしまったお前が私のそばに立っている。それを私は実感で知っている。それが私に少しも変だとは思われない。ならば、私も半分死んでいるのだろう。そうかもしれない。それが須永に叩き起されて、こうなって、さて、私の眼が急にハッキリ見えはじめた。夜の空気が、ヒンヤリと、これまでとはまるで違った肌ざわりで私の顔を撫でる。おかしいぞ。夜の闇が不意にベットリと黒いものとして私を取り巻いて見えて来る。闇はズッと前から有ったのだ。見えていたのだ。それが今急にベットリと、まるで液体のように私を取り巻いて、ここに在る。どうしたのだ? これは、なんだ? やっぱり私は死につつあるのか? それとも、ホントに生きはじめたのか? ぜんたい何が起きたのだ? 何が起きようとしているのか? 須永は、どこへ行ったのだろう? 須永!
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(舟木が腕まくりをおろしながら入って来る)
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舟木 ……
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