り]
浮山 ……モモコ、寒くはないか?
モモ …………(フルートを吹きながら、頭を横に振る。……そのフルートの音と浮山の声で室内の空気が溶けて、やわらかになる)
省三 須永君!
須永 え?
省三 この……(後が言えないでいる)
モモ 須永さん、いっしょに塔に行かない? あすこの方がよく鳴る。(立って須永の方へ)
須永 ええ。(救われたように立ちあがる。足がしびれて少しヨロヨロする)
浮山 でも、あぶないから、もうよしなさいよ。
モモ だって須永さんと一緒だもの。
浮山 でも、こんな暗いからさ。
モモ ホホ、暗いのは平気よ。(須永の手を取って、スタスタ出て行く)
浮山 気を附けるんだよ。……(一同をなんとなく見渡して、立ちあがる)やれやれ。
房代 どう言うんでしょう、ホントに。(須永の残して行った紙幣の山と、その上にのっている指輪を見て)これ、どうするの?
浮山 さあ、やっぱり、そりゃ須永君のもんだろう。
房代 そうね。……(柳子の方を流し目で見ると、柳子はまだボーッとして、立つのを忘れているので、その紙幣たばと指輪を持ちあげて、わきの丸テーブルの上にのせる)
舟木 (織子に)さ、帰ろう
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