と、イザとなるとほしがらない。アプレの若いもんの量見なんて、わしらにゃわからん。そら、ここにのっている(夕刊を指して)人殺しにしたって、三人も殺したのに理由がよくわからんとある。何が全体どうなるか――
舟木の声 馬鹿! わたしがこれだけ言っても、わからないのか!
省三の声 わからないのは、兄さんの方じゃないか。僕だってこれでそんな軽率な気持からやってんじゃないんだ。血を売ってまで、自分の血を売ってまで生活してだな――
織子の声 もうよして! いいじゃありませんの、もう――


     7 舟木の室

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(6がスッと暗くなると同時に、この室が明るくなってテーブルをはさんで舟木と省三が睨み合っており、その間に織子の言葉が割って入っている。織子の言葉は続く)
[#ここで字下げ終わり]
織子 もうよして下さい! お願いだからもうよして! (舟木に)省三さんはもう子供ではありません。シッカリ考えてなすっている事なんですから、それでいいじゃありませんの。(省三に)兄さんはただあなたの身の上を心配して言ってるだけなんですから。
省三 わかってますそれは。でも兄さんの心配自体が
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