四度私の所へもいっしょに連れて来たことのある、夢を見るような眼つきをした園山というのと、たしか恋仲だ。この男の口から聞かされた事は無いが、多分私のカンは、はずれていない。……(二人とも三階の私の室に入っている。私、電燈のスイッチを入れ、明るくなる)おかけなさい。
須永 はあ。(椅子にかける)
私 ホントに何も食べないの? ビスケットぐらいなら、ここにもある。
須永 いいんです。
私 ……そいじゃ、ブランディが少しある。(テーブルの袖からビンとコップを出して注ぐ)……はい。
須永 すみません。……(素直に飲む)
私 (これも一口飲んで)だけど、解散したと言うのは、どう言うの? せっかく、あれだけ熱心にやっていたのに? 二年ぐらい続けて来たんじゃないかな?
須永 僕に責任があるんです。みんなに悪いと思ったんですが。
私 だからさ、君のどう言う気持から――?
須永 いえ、別に――
私 話したくなければ、聞かしてくれなくてもいいけどね――仲間割れでもしたと言った――?
須永 いえ、それも多少あるにはあったんですが――なんだか芝居をするのがイヤになりまして。……どうやっても追いつけないんで。

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