ない世の中は、ほかにチャンと在る。そう言う気がすると言ったね? それが、そんな気がしなくなった。ここから地面までは、たしかに何百尺かの距離がある。チャンと僕はここに生きている。これは嘘でも夢でもない。僕は生きている。それがわかった。ありがとう。なんだか、うれしくって、しょうがない。……(スッと塔の手すりの上にあがって立つ)モモコさん、お月さんが昇った。吹いてくんないかな。
モモ うん。……(フルートを構えながら)また須永さん、ぶら下がるの?
須永 そら、あんなに昇って来た。
モモ あら、何か呼んでる。(耳をすます。ズーッと下方から、はるかな人の声がオーイとヨオーの間で、長く尾を引いて呼んでいる)……あれは三階の先生だわ。
須永 ……(これも耳をすましていた後)きれいだな。
モモ ……(フルートを吹く。例のメロディだけを、静かに尾を引いて三度ばかり吹きすます)
須永 ……(その間に、ズボンのポケットから、ハンカチにくるんだ小さいビンを出し、一息にクッと飲み、ビンを塔の外に捨てる。それが月光にチカッと光って消える。……そのまま、手すりに立ってフルートを聞いている。メロディの切れ目の所で、静
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