じゃないかな?
須永 そうですか。……(まだ何か言いたそうにするが、言わず、チラリと若宮に目をやってから、スタスタと部屋を出て行く)
[#ここから3字下げ]
(間。……そのままジッとしている若宮と浮山。若宮は胸が苦しいと見え、左手で胸をおさえて、刀は握ったまま石のようになっていたのが、力を出し切ったと見えて、ゴロンと横に倒れる)
[#ここで字下げ終わり]
浮山 ……若宮さん、どうした?
若宮 なあに。……ちきしょう、気ちがいめ! だから、一刻も早く警察に引き渡しゃいいんだ。ふう! ふう!
浮山 ……(それを見ているうちに、はじめてフテブテしくニヤリとして)あんたも、しかし、いいかげんにするがいいなあ。変な、あんた、慾をかいて、なにしていると、間も無くあんた死にますよ。
若宮 ふう! ヘッ! 嫌がらせかね? ヘヘ、(と息も絶え絶えだが、口はへらない)死ぬのは広島の婆さんで、わしじゃないよ。わしは、まだ百まで生きてるつもりだ。ヘ、婆さんが死んだとなると、この家屋敷あ、柳子とわしの手に転げ込んで、君なんざ、往来なかへ、おっぽり出されるからね。気がもめるわけさ!
浮山 知らないんだなあ。あんた
前へ
次へ
全164ページ中117ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング