」は縦中横] 若宮の室

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(血まなこになった若宮がフーフーあえぎながら、畳を二枚はがして、その下に敷いてあった書類や株券をカバンにさらいこんでいる。そばには開け放した中型の金庫のわきに、テープをかけた紙幣束が、うず高く積んである。……)
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私 (ふすまの外の廊下から)若宮さん。若宮さん!
若宮 (ビクンとして)……だ、だれだ?
私 いや、私だ。
若宮 開けてはいけない! 入って来ちゃ、いけない!
私 私ですよ。(言いながら、ふすまを開ける)どうしたんです?
若宮 あ!(と紙幣束を身体でかくして)困りますよ。どうして、あなた――
私 (相手のけんまくにおどろいて)……どうしました?
若宮 な、なんです?
私 いや……須永、さっきの須永、どこに居るか知りませんか?
若宮 知らない。どうかしましたか?
私 そうですか。いや別に。
若宮 早くなんとか警察に引き渡すとか、なんとか、してくれないかな。あんな物騒な、あなた、何をしでかすか、わかったもんじゃない。わしは、もう――
私 (その辺を見まわして)逃げ出すんですか?
若宮 いいや、わしが逃げ出す
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