言う兵長だ。部隊本部の参謀に可愛がられていやあがって、いつでも俺たちの事を言いつけやがる。スパイだ。島田の口のひとつで昇級したり、あぶない所へ転属されたりするんだ。そいつが、俺の事を目のかたきにして、インテリなんぞに戦さあ出来るもんか。人が殺せるもんか。年中俺をなぶり者にするんだ。そこい、便衣隊が三人つかまった。共産軍の、まだ十七八の青年だ。おめえにくれてやるから、やって見ろ。やれめえインテリ。分隊全員の前で歯をむいて笑うんだ。カーッとなった。ホントはやりたくなかった。ホントは笑ってる島田をやりたかった。しかしカーッとのぼせて、俺は銃剣を振りかぶっていた。ズブッと言って、小さな声でキイと言った。十七八の共産兵だ。俺は目の前が真暗になった。夢中で突きまくった。三人終って、銃剣を手から離そうとすると、ネバリ附いてて取れないんだ。ボヤッとした月が出ていた。……殺したのは俺だ!
須永 君が殺したんじゃないよ。
省三 殺したのは俺だ!
須永 殺したのは戦争だ。
省三 う? ……そうだ。だから俺はあの三人の仇を打ってやる!
須永 三人を殺した君がかね?
省三 そうだよ、仇を取ってやる。
須永 する
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