だ、もうよしました。
私 そう? しかし、たしか君などが中心になってやってたんじゃない、その君がよしたとなると――?
須永 ですから解散と言う事になりました。
私 でも、あれだけ熱心にやっていたものを、どう言う――?
須永 ええ。……
若宮 さあてと、ごっつおさん。(ガタガタと立つ。ウィスキイのびんだけは離さぬ)柳子さん、あたしんとこに来て、ちっと飲みませんかね?
柳子 ありがとう。でもそれよりも、私の部屋で久しぶりに二、三年いかが?
若宮 いやあ、差しではあなたにむかれるに決っとるんだから。勝目の無い勝負は勝負とは言えん。
柳子 御冗談。先生や浮山さんも、いかが?
私 あとで伺いますかな。(立ってユックリと歩いてドアの方へ。須永も自然にそれに従うような形で歩き出している)
浮山 御馳走さん。(と箸を置いて)あたしは手入れが残っていて、地下室にもぐりです。(立つ)
房代 私も入れて。
若宮 (室を出て行きかけドアの所で聞きとがめて)へえ、お前も引けるのか?
柳子 どうしてあなた、今どきのお嬢さん、早いのなんのって。
若宮 そうですかねえ。(房代に)お前はトランプやサイコロ――何とか言った、そう、ダイスか。あの方じゃなかったのか?
房代 なあによ、そんな――?
若宮 ハハ、いやなに、ハハ――(笑いながら去る)
省三 (それまで黙々として飯をかき込んでいたのが、ジロリと房代を見て)ヘッヘ、ヘ!
房代 なんですの?
省三 ふっ! (モグモグと食っている。それを睨んでいる房代)
舟木 (立って出て行きかけながら)省三、あとでちょっと話したい事がある。(出て行く)
省三 うん。
3 私の室
私 ……(暗い廊下を、須永を従えてユックリと歩き、それから三階への階段を休み休み昇って行きながら)なんの変ったことも無い、昨日も一昨日も一カ月前も同じ平凡な夕食の風景だ。この須永のような青年が訪ねて来るのも、ほとんど毎日のことで、若い人たちは好きな事をしゃべり、好きな事をして帰って行くので、私は相手になったりならなかったり、眠くなると捨てて置いて自分だけ眠ってしまう事もある。私はもう人を愛さない。憎まないと同じように愛さない。人は勝手に私の所に来るがよいし、又勝手に私から去って行くがよい。私はただおだやかな眼で、それを見送るだけだ。既に私は生から何も期待しない。以前はこうでは
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