賀山がお目にかかりたいと言つてくんな。
アサ ……今、今居ませんよ。
男一 居ない筈はねえ。
アサ なんの御用ですか。
男一 此の家屋の事に就いて御相談したいことがあつて来たつて、さう言つてくれ。
男二 おい、ねえちやん、早えとこ頼むぜ、いい子だから。(アサの腰に手をやる)
アサ なんだい! フン、糞面白くも無い。ゐないと言つたら――
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と云ひかけてゐる中に、男二、出しぬけにステツキをふり廻す。
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客二 ……おい、どうしたんだよ? なんだいあんた方あ?
男二 おめえこそ、なんだ?
客二 物騒な物を持つてゐますねえ?
男二 なによつ!
客二 まあ/\さう怒るなつてえことよ。
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客二を先程からヂツと見てゐた男が、あつと低い声を出し、男二の背広のスソを引張る。
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男二 なんだよ? ……(男一が耳打ち)……え? ひこ? 彦か? そいつあいけねえ。(客二をちらツと見る。青くなつてゐる)
男一 どうも、お見それしちやつて……(ペコペコする。男二もペコペコする。二人コソコソと出て行つてしまふ)
客二 ……なあ
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