んなよく歩いています。
いま日本はひじょうに混乱し、衰弱しています。これは日本の歴史はじまって以来、いちばんひどいいちばん根ぶかい混乱と衰弱だろうと思われます。悪くすると、日本はこれまでの日本とは違ったものになってしまうかもわからないし、また考えようで、もしかすると、新しい日本が生まれるかもしれない。そういう時期にわれわれはいると思うのです。これをわれわれ自身の力だけで、よいほうへむけることができるとは思われません。しかし、多小でもその方へむかってつとめなければならぬだろうし、つとめたい。われわれは、いずれにせよ、理屈からではなく、われわれ自身とわれわれの国を自ら救いたいという欲望を捨てさるわけにはいかないのです。
それには、何はともあれ、まず歩くことです。国の中を、ここからかしこへ行ってみることです。かしこからここへ戻ってきてみることです。それがわれわれにとって、苦しくつらいだけだったら、つまり私どもにとってそうすることが不幸になることだけだったら、われわれ小さいよわい人間にはかならずしもやれないし、またそんなことはしない方がよいという考えもありうると思います。しかし歩くことは、
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