とができるのである。
 そうなんです。歩く人は歩く人自身、歩くことによって貴重なものをうるのと同時に、歩いていく土地々々の人びとを、横につなげていくことになるのです。そして、そのことが、さらに貴重なことがらだと私は思う。ことにいま、日本がこのように混乱し衰弱しているさなかでは、まず日本人全体が横につながることほど大事なことはないと思います。
 愛国のことを言うことは、言いたい人にまかせておいて、私はただなるべく歩いてみるようにしたいと思っています。私などがいくら歩いても、たいしたことが起きないことは知っているが、しかし私でさえも歩かないよりも歩くほうがマシなことを私は知っている。
 君はどうですか?[#地付き](一九五二・九)



底本:「三好十郎の仕事 第三巻」學藝書林
   1968(昭和43)年9月30日第1刷発行
入力:伊藤時也
校正:伊藤時也・及川 雅
2008年12月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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