方の日本人と、かの地方の日本人の姿のあらゆる要素や面や質の異なる点と同一の点とを見くらべ、それらの一時性と恒久性を区別したり、それらの全体を統一的につかんだりすることができる。それから、その土地々々の暮しかたや産物や食物や景色などの特色を味わうことによって「日本」という観念の中身をゆたかに深く複雑なものにすることができる。
その旅人に通りすぎていかれる側の、その土地々々の人びとのうえに起きることは、見知らぬ日本人の自分たちとはどこか違う姿や表情や動作を見ることで、日本はこの土地だけでなく、もっと広くて、そこにはまだ自分たちの知らぬいろいろのものがあることを感ずることができる。
その旅人に話しかけられたり話しかけることによって、他の町や村の事件や事情や、日本全体の現在おかれている情況や空気を知ったり察したりすることができる。そして、それらの知識や推測や感じに照らしあわせて、自分たちの暮しや生活や考えを修正したり、いきいきとしたものにしたり、もっと広がりのあるものにしたり、喜びのあるものにしたりすることができる。つまり、いろいろの意味で、その旅人をとおして、他の多くの日本人とつながるこ
前へ
次へ
全15ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング