である。草にかくれて姿は見えない。
歌は二度繰返へされる。
その二度目の真中あたりで、利男が水着姿で、街道の方からスタスタやつて来る。
唄声に近づくに従つて足音を忍ばせるやうにして、砂丘の下で立停り、ジツと唄を聞いてゐる。
唄が終る。
[#ここで字下げ終わり]


利男 ……京子さん! 京子さん!
京子 ……(草の上に上半身をムツクリ起して)あゝ、利男さんでしたの? 誰かと思つた。……(海水帽に水着一枚。肩から浴衣を羽織つてゐる)
利男 (チヨツトまぶしさうにしながら)しばらくでした。兄さんと御一緒ですつてね?
京子 いついらつしたの? 御見舞ひ?
利男 えゝ。たつた今来たばかりですよ。あなた方が泳いでゐらつしやると聞いたもんですから……。比企さんは沖ですか?
京子 もう海は冷たくつてよ。私は後でボートに乗るの。
利男 ……相変らず良い声だなあ。
京子 あら、聞いてゐたの? お人の悪い。
利男 少しボーツとしましたよ。毎日ガチヤガチヤと仕事に追はれてゐるもんだから、たまにこんな所に来ると、何だか変な具合になつちまひましてね。(京子に並んで腰をおろす)
京子 御就職きまつたんですつてねえ
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