怩フ窓の下にテーブルと椅子。上手のズット手前に坐る式の勉強机。下手の手前の隅が炊事場になっていて、シチリンやバケツや薪や手斧や釜や急造の食器台など。あちこちの壁に寄せて、寝具と書籍が積みあげてある。上手奥の隅の天井が破れてポッカリと黒い大きな穴があき、天井と壁に裂け目が入っている。天井からさがっているシャンデリヤ。奥下手よりに出入口。上手の壁の手前に扉。その奥の壁に立てかけた梯子。
奥の窓から半焼けになった庭木の頭と晴れた夕空。
誰もいない。静かな中に、時々どこかでドシン、ドシンと鈍い音――間。
奥の出入口から清水八郎が出て来る。学生服の左腕が肩の所から無く、上着の左袖はポケットの中に突込んでいる。右手に重そうなフロシキ包をさげている。五六歩入って来てキチンと両足をそろえて立ちどまるが、誰も居ないので、あちこちを見る。――フロシキ包を床におろす。ハンカチを出して額の汗をふく。
同じ出入口からせい子が出て来る。抜けるように色の白い、しなやかな身体つきの三十前後の女。ひとえの着物にモンペ。美しい素足と泥だらけの両手。
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せい ……(そのへんを見まわして)あら、ど
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