ば君と僕とは共犯者である。君を鞭打つのは、僕が僕を鞭打つのだ。鞭の痛さに君が音をあげるよりもズット前に、同じ鞭の痛さに僕は泣いている。比喩では無く、文字通りに泣いている。これが「鞭打つ」と言う事になるのであったら、僕は鞭打つ。君は、立ち上って、歯向って来るか、鞭の方向に向って歩み出すかのいずれかをせよ。
更に又、君は「君(三好)が自分の一本槍な誠実さから、そう感じ、そう批判してくれるのは……」と言う。まるで「あなたは神様であるから、そんな風にお考えになれるし、そんな風におやれになるでしょうが、私共は平凡な人間ですからこの様に思い、この様にしか出来ないのです」とでも言うように。
違う! 第一に、それは事実で無い。次に、それは卑劣きわまる逃げ口上なのである。
なにが僕が一本槍なものか。なにが僕が誠実なものか。もし僕が誠実だとするならば、君と同じ位に誠実であるに過ぎない。
見ろ、僕はこれまで思想に於ても生活に於ても仕事に於ても、あれやこれやと、これ程に血迷い歩き恥をさらし、人を傷けると同時に自身をも傷け、昨日の事を今日裏切り、少しばかりの苦しみや悲しみにも忽ち自れを失い、未練と執着の
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