出ねえのう。(と大ノコを持ち上げて大木の上にのせてノコを動かす。その音)
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その音に調子を合せて、かれた寂しい、ほとんど人間らしい味の無い、山の中を風が吹き過ぎるような声と節まわしで。
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六平「やーれ
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山で切る木は、こら
かずかずあれど
思いきる気は
さらにない
やれ、チートコ、パートコ」
ノコギリの音
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六平「やーれ
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破れわらじと、こら
おいらが仲は
すぐに切れそうで
切れやせぬ
やれ、チートコ、パートコ」
ザーッ、ゴーッと岩を噛んで流れる急流の音。
その急流に乗ってギギギ、ゴドン、ギーッと音をさせて筏が流れくだって行く音。
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仲蔵 (気の立ったかん走った声)そら、そら! 伍助! そっちの岩を竿で突っぱれえっ! ウンと突っぱれっ!
伍助 (竿を突っぱりながら、ほえる)おおーっ!
仲蔵 (更に遠くの後方へかけて)杉村あーっ! 手かぎで、そこの木の根っこ、こねあげろーう! トモが引っかかると筏あ、まんなかから、ぶっきるぞう! しっかりせ
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