およね そんじゃ、五郎しゃん。どうぞ、お願いしまっす!(三味線を取って騒ぎ歌のような調子を、二つ三つ鳴らす)こんなだったかいな?
五郎 イヤだ僕あ!
およね なしてな? なあ、お願い!
五郎 さっきの博多節の方が、よか……
およね そんじゃ、あたしが博多節ば、五郎しゃんと仲さんに教ゆっけん、木びき歌ば教えてな!
五郎 うん、そんなら。
およね そんじゃ、博多節ば、もう一つ唄いますけんね、その後で木びき歌ば唄うてなあ。
五郎 うん……
およね (三味線を弾く)
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「博多帯しめ
筑前しぼり
筑前博多の帯を締め
歩む姿が
ありゃどっこいしょ、柳腰
お月さんがチョイトでて
松の蔭、はい今晩は」
今晩は、と終るか終らないのに、五郎が少年の声をはりあげて、軍歌でも歌うような勢いで、
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五郎 やーれ!
およね (あわてて)あらら!
仲蔵 アッハハ、ハハ!
五郎 ばってん、こうじゃろが!
およね そうですたな、そうですたな! つづけて、五郎しゃん、つづけて!
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ジャンジャカ、ジャンジャカと三味線をひく。
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