業だ。そうじやありませんか」
「どつちせ、忍術修業は終つたようだな。けつこうです」
「え?」と言つたが、すぐに思い出したと見えて、フフフと笑つて、「ちがい無い! いやあ、こんなことになつて、そう言つた事にも格も法もメチャメチャになりましてね、ただもう、やらずぶつたくり式と言いますかね、つまらないようです。と云やあ立派そうですが、ありようは、こつちが時代おくれになつてしまつたんですよ。もう私らの出る幕じや無い。ハハ。だけど、旦那あ、どうして、あんな所に居たんです? あすこを御存じなんですか?」
「いや、今日はじめて行つたんだ。チョッと會いたい人があつて」
「へえ、それは又どう言う―? いや、實は、あんまり思いがけない所にあんたが居るもんだから、はじめそうじやないかと思いながら似た人だ位に思つてね。それがホントにあなただとわかつて、二度びつくりしたわけだ。じや、あすこの黒田さんを御存じ?」
「いや、知らない、黒田と言うの?」
「じや、この、まるきり、知らないんですね? そうですか」國友はグイグイとビールを飮みほして
「するてえと、あすこの誰に?」
「貴島と言つてね」私はポケットから名刺を出
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