らめてスナオにしているので、大した苦にはなりません。當局でもあの頃は、或る程度まで「やむを得ない事」と見ていたようで、一見して惡質の者以外は、それほどキビシい取扱いはしなかつたようです。僕の運ぶ物は、それほど量が多く無いし、ほとんどS裏の「春子の家」で買つてもらいました。はじめの頃、夕飯を食いかたがた、そこに寄り、春子さんにいろいろ聞かれるままに、これこれだと話すと、それなら、どうせ内でも買わなければならんから、よかつたら、ほかへ行かないで此處へ來てくれと言うので、それ以來、ほかよりも、いくらかずつ安く買つてもらうことにしたのです。どうせ、今どきの小料理のことで材料は闇で買い入れなければ立ち行かない状態なので、春子さんの方でも、よろこんでくれました。僕が行くと、まるでお客のように酒をつけて御馳走をしてくれ、おそくなると奧の小部屋に泊らせてくれます。上京のたびに、僕はあちこちと歩きます。そして疲れ切つて山梨へ戻つて行くのです。あの女の事を除いては、僕の生活は、ほとんど何の不滿も無く、復員以來、はじめて落着いたらしく見えました。氣が附いて見ると、ゴロツキの兄きかぶでいた僕が、みすぼらしい姿
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