れない感じなのです。それでいて、氣が附いて見ると、客觀的に言つて、ほかのどんなお上品な女よりも久子さんのしている事は倫理的にも上等なのです。ホンの一例ですけれど、男に對する貞潔さ。僕は終戰後の世間で、夫や許婚が歸つて來ないうちに、他に男をこしらえたりして、そのために後になつてゴタゴタが起きている例をたくさん知つていますが、そんなのを見るたびに「夫や許婚が歸るまで、とにかく待てばいいじやないか。それからの事にすればいいじやないか。男はみんなひどい目に逢つて歸つて來るんだ。それさえも待てないか!」と思い、それを通して、そう言つた日本の若い女たちに對してヘドの出るようなケイベツを感じ通して來ているのですが、その點で、久子さんを見ていると、なにか男としてホッと安心できるような氣がします。人の事ですけど、たのもしいような、お禮が言いたいような氣持がするんです。そのほか、生きることの一切を通じて、責任感が強く、獨立していて、堂々と確信をもつて正しい事をやつているのです。
 僕は久子さんからガミガミ叱られながら百姓仕事をしたり、カツギ屋をしたりする生活が、氣もちよくなつて來ました。そうしていれば、僕
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