。君はわかつてくれる筈だ。だつて、それも君がこれまで、いつも言つて來た事なんだから、それを今さら認めてくれないのは、君のイジワルか、君の理論の虚僞じやないか!」と言う。
この點では、彼は稻子の武器を逆手に取つているため、稻子には一言も抗辯できない。
兩方とも、一所懸命なり。伸一郎はズルイ。稻子の方はバカゲている。
聞いていて自分は男を憎み、女を輕べつした。
共産主義というものは、こんなものなのか? いや共産主義とは限らない、主義や理論が、こんなふうに、個人の人間的な愛情の間題などに對して、これほど無力なもの、又はウソのつき合いの道具になるものならば、全體なんのタシになるのであろうか? こんな人たちにとつては主義やイデオロギイも、みんなウソではないのだろうか? すくなくとも裝飾に過ぎないのではないのか? 託兒所なども結局は本心からのものでは無いのではあるまいか?
とにかく稻子は、まだ伸一郎を愛しているんじやないか。それなら、なぜに正直にそれを言わないのだ? 言えないのだ? 言つても三角關係は、どうにもならぬかも知れん。しかし、こんなバカらしいウソツキゴッコをしているよりは、まだ
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