あたしは、うれしかつた。永いことそのパンを見ていた。死んでもいいと思つたなあ。その時の、コバグチをむしり取つたMさんの女のようにコマゴマとした手つきが今でも目に見えるの。…………そう言うことがあつたの。それを思い出したら、たまらなくなつた。……良い人だつたわねえ。良い人は早く死ぬ。あたしなんぞ、あんな人の代りに死ねるもんなら、身代りに死んでりやよかつた。ホントーオに、そう思うの。生きていたつて、このザマだもん! 以前から私なんぞ花の咲いた事は無かつたけど、しかし昔は、氣持だけはチャンとしてた。純粹だつたもの。だから、苦しいのなんかヘイチャラだつた。今は、もう、腹ん中がダメんなつてしまつてる。量見がまちがつて來ちやつてる。だから、こんな仕事なんかフッツリとよせばいいのよ。しかし、よせないの。こいで、十年前によしておけば、よせた。今となつては、もう、やめようと思つてもダメ。ひでえもんさ。……やめられないとあれば、仕事の選り好みを言つてはおれない。ダラクもするさ。でないと、こんな所に一日でも、いつときでも、がまん出來やしないの。がまんして、こんな所に居るためには、自分がダラクすることが必要な
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