つたわねMさんて? でしよう? 良い人だつたなあ!」
言つている間に、ボロボロ泣きはじめたのです。びつくりしました。シワだらけのミジメな、しかも、ドギツイ化粧を半分やりかけたままの頬にタラタラと涙が流れて、悲しいよりもコッケイになります。しかし、僕は思いました。こんな場所で、こんな女がMさんを思い出して泣いている。これはMさんが死んでから流された、いろんな人々の涙の中で一番純粹なものかも知れない。Mさんは自分が死んだ後に妻も子供も、財産も著書も、その他何一つ殘されなかつた。しかし、こんな人の中に、心の底に何かを殘していられる。Mさんは、やつぱり、えらかつたんだなあ。そしてあの人のえらさは、こんなようなえらさだつたんだ。……そんなふうに思いながら僕は坐つていました。「バカね、あたし……」景子は、しばらく泣いていてから、テレてニヤニヤしながら言いました。「變に見えるでしよう? 告別式にも行かないどいて、今ごろ泣くなんて。フフ! まるで、あの人の色女だつたかと思われかねないわね? そうさ、Mさんて人は浮氣な人だつたからね。でも私なんて、こんな、昔つから芝居でも映畫でもホントのワンサでね。M
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