いにしてもらつた者で、貴島と言つて――」
「え? Mさん? Mさんだつて!」彼女はビクンとしたように高い聲を出し、はじめて振返つて、僕の顏をじかに見ました。「あんた、お弟子さんだつて? そう……そいじや、役者?」
「いえ……シナリオだとか芝居の演出方面の勉強をしようと思つて、……でも、まだホンのやりかけたばかりで出征してしまつたもんですから……でもMさんからは、たいへん可愛がつてもらつて―」
「M――か」と景子は、Mさんの姓名全部を呼び捨てに言つて、しばらく何か思い出すような眼つきをしていたが「フン……そうなの? そんなら、それをなぜ早く言わないのよ。あたしは又、どつかのヨタが、タカリに來た位に思つていた。ごめんなさいね」
はじめて微笑した。笑うと鼻のわきのシワがいつそう目立つて、まるでキズのようになり、更に婆さんヅラになるが、意外な位に人の良さそうな表情になつている。
「そうMさんのお弟子さんね。そんなら、あたしともマンザラ縁が無い事も無い。フフ。いえ、別に私はあの人の弟子じやなかつた。向うは大スタアでこちらは名も無いワンサ女優だつたんだから。だけど、私、尊敬してたからね。良い人だ
前へ
次へ
全388ページ中275ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング