ている。「なんか、まちがいじや、ありませんかねえ」
「おい杉田!……お前、黒田んところの一本杉だろう?」いきなりドス聲で杉田の名を言い、同時にドタドタと六七人の足音が入り亂れて近づいて來た。次の瞬間に、パッと壕の入口に飛びこんで來た杉田の顏の血相が變つている。貴島に向つて早口で一息に押し殺した聲で
「國友の奴等だ、六人ばかり居る。ここは俺が引き受けたから、兄きあ、すぐにズラかつてくれ!」と言うなり、ポケットの中からギラリと光るものを掴み出して、スッと外へ消えた。
 ギャァと、すぐに、男の叫び聲がして、あとは、ドタドタドシンと――壕の中にいると、まるで頭の上に、入り亂れる足音が、地響きを打つて聞える。
 貴島がスッと立ちあがつた。
「駄目だよ貴島、あがつて行つちや!」久保が言つた。それを見おろしてニヤリとして
「うん……」
「行くなよ、つまらん!」
 久保の聲を背に、ユックリと普通の歩度で貴島は階段をあがつて行つた。
 ドシンドシシと格鬪している音が續く。聲を立てる者は一人もいないのである。防空壕の天井の隅から、パラパラと砂が落ちて來る。……久保と私は互いに顏を見合せたまま坐つていた。久
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