壕の天井を睨むようにして地上の氣配に耳をすましている。貴島だけが、ほかの事でも考えているのか、壁に倚りかかつてボンヤリとロウソクの灯を見守つていた。
「ウソだな。足音もしないじやないかね?」しばらくしてから杉田が低い聲で言つた。
「う、うん……五、六人だよ」久保が言つた。そのままシーンと靜まり返つて數秒が過ぎた。足音など私には聞えなかつた。
そのうちに、壕からかなり離れた邊でピシリと枯枝でも踏みつけたような音が微かにした。それとほとんど同時に、杉田がスッと立つや、恐ろしい敏捷さで壕の入口の階段をパッと外に飛び出して行つた。あと又、ヒッソリとしてしまい、なんの物音もせず。しばらくして、杉田の聲で
「おいおい、何だか知らないが、まちがえてもらつちや困るよ。……誰だね、お前さんがたあ?」
すこし離れた闇の中へ向つて言つているようだ。しかしその方からは何の答えもない。
「え? 誰だね? 何か言つたらいいじやないか」
しばらく沈默がつづき、今度は全然聞いたことの無い男の聲が、離れた所から
「ちよつと伺いますが……貴島さん、居ますね?」
「キジマ? ……さあ、そんな人は知らんなあ」杉田が言つ
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