かつた。杉田や久保の前では話せないらしいのである。
 するうち、綿貫ルリの事を私が、言いだして見た。その後ルリは君んところに行つたかと聞くと、「いいえ」と言うから、これこれで、實は今日Nのスタジオに訪ねて行つたが不在。國友の部下に連れ出されたらしい言うと、急にギラリと例の眼色をした。
「……そうですか」しばらくしてから言つて、心配そうに考えこんでいる。私は國友と私との關係を手短かに話し、二三日前の會見のこと、ルリの事についても國友に一通り話して置いたから、彼の關する限り、ルリの身の上にそれほどまずい事は起きないと思つてよい事を言つた。貴島はいくらかホッとしたようであつた。
「なんです?……國友がどうしたんですと?」杉田がこちらを振向いた。
「いや、なんでもないよ」と私が言うと、杉田はチョッと變な顏をして貴島に眼をやつたが、やがてその貴島がウィスキイのびんを取り上げて酌をするのに「おつと!」と唇を持つて行つた。
 そんなふうにして、どれ位の時間が過ぎたろうか? 夜が更け、そのうち、全く出しぬけに、血なまぐさい鬪爭が始まるまで、壕の中は男ばかり四人と、酒とコーヒーとタバコの匂いと、なごやか
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