? ウチじや、あのありさまで、私を食べさせて勉強させてくれるような力は無いの。だから私が芝居の勉強をつづけて行くためには、今の劇團に居るよりほかに、方法は無いんです」
「……困つたねえ。……まあ、なんとか、そこで、つまり要領よく、つまりガマンしてやつて行くんだなあ」
「どうガマンのしようが有るんですの?」
「どうつて、具體的には言えんが……だから、君が最初映畫か芝居の方へ入りたいと言つて來た時、僕は口をすつぱくして、とめたね? いや、今の世の中が、大體において、どこもかしこも似たようなものだ。ガマンする以外に無い。ハッキリしようとすると、全部を肯定するか全部を否定する以外にないもの。全部を否定すると言うのは、自分の良心みたいなものを押し立て、それ以外のものに反抗することだ。誰にしたつて、これを一番やりたい。だけどこれはよつぽど強い人でなければ出來ない。なまじつか、中途半端に良心的になつたりすると、踏んだり蹴つたりされた上に、落伍してしまう。それ位なら、全部をあるがままに肯定して、つまり、言つて見れば闇屋かパンパン――まあ、そう言つたふうになつてもしかたが無いから、とにかく生き拔いて行つ
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