と私と國友へ頭を下げただけで、何も言わず坐つた。顏色にはほとんど血の氣というものが無い。眞蒼である。この前の時から見ると頬がげつそり痩せたようだ。非常に沈んでいるように見えるのは、自分で自分をおさえつけているためらしい。底の方で強く昂奮している事は眼の色を見ればわかる。こちらの胸先に斬りこんで來るような眼だ。全體の美しさが又變つた。二十二や三の女にこんな種類の美しさが生れ得るものだろうか。ほとんど凄艶というに近い。私は一瞬あじさいの花を想い出した。咲いたばかりのあじさいが雨に濡れている。………誇張ではなかつた。その證據に國友大助も、彼にしては珍らしく強い興味を起した眼色をして、新しい客の爲に少し身を退つた横の方からマジマジとルリを見ていた。
「どうしたんだい?」
 私が言つても、ルリは答えない。怒つたように私をジッと見ている。言う事が無いのではなく、何をどんな風に言つてよいのかわからないらしい。膝の上の白い蟲のような指先が細かくブルブルと震えた。
「判らないんです。いえ、どうしてよいか判らないんですの」だしぬけに、しかしはじめは低い聲で口を切つた。「私の事じやありませんですの。いいえ、
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