それから(貴方は私をケガしといて、どうしてくれるの?)と言います。ケガしたと、たしかに言つたんですよ。ヘヘ! 貴島は返事をしないんです。ルリはいろんな事を言い出します。そのうちに、えらく昂奮しましてね。貴島の方はボソボソと何か言つているんですけど、ルリの詰問が詰問なら貴島の答えも答えで、何やらまるきりわけがわからないんですよ。チンプンカンプンの議論ですね。わかる事は兩方がえらく昂奮している事だけで、特にルリなど蒼くなつたり赤くなつたり、口から泡を吹かんばかりにして貴島をなじるんです。あの女は、やつぱり氣が少し變なんじやないですかねえ。僕はしばらく默つてそれを聞いていたんですけど、その中にヒョット(こいつは一種の痴話げんかのようなものじやあないかな?)という氣がしたんです。そう思つたら急に自分が馬鹿馬鹿しくなつて、二人を捨てておく氣になつて、僕はその胴の間を飛び出して、ちようど隣りにもやつてあつた小舟に飛び移つて、そのトマの下にゴロリと横になつて煙草を吸つていました。疲れていたのでそのままグッスリ眠つてしまつたんですねえ。ですから、そのあと貴島とルリの間にどんな事があつたのか僕は知りませ
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