まで出掛けて貴島君を追いかけ※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]しているようだとか………いや、ルリらしい女が近くをウロウロしていると貴島君の手紙に書いてあつたんだが?」
「そうですか。いやあ………」靴を履きながら佐々はその晩初めて笑つた顏を振り向けながら「その女がルリ君だつたかどうか知りませんけどね、四五日前ルリ君と貴島とが會つたのは事實です。何の事あない、僕が逆にルリ君に尾行されていたんですよ。實におかしな女だ。四五日前僕が貴島のいる船へ――といつても、もやつてある四五そうの小舟から小舟へ渡つて行つてその船に行くんですがね、その船へ飛びついて、ヒョイと後ろを振りかえると何時の間に來たのか、脱いだ下駄を片手に持つてハダシになつたルリがヒョックリ、トモ[#「トモ」に傍点]に立つているじやありませんか。仕方がないや。そいで貴島に會わせました。實におかしな會見でしたがねえ。初め兩方で睨み合つたまま、何時までたつても默つているんです。その中に貴島がだんだんしよげて來て、まるで鹽をかけられた青菜のように首うなだれてしまいましてね。その中ルリが(貴島さん貴方何故私から逃げるの?)と言います。
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