ッと附けて來て此處を知つたんじやないかねえ」
佐々のことなんです。そんなバカな事は無いと僕は打ち消しました。しかし、あり得ない事では無いのです。佐々は僕がこうして方々に身をかくすようようになつてからも、二度ばかりやつて來ています。非常にハシッコイ男ですけれど、それだけにソソッカシく、とんでも無い所で拔けた事をしかねない男です。「とにかく用心して下さい。親分もそう言つていた。昨日も金の野郎が櫻木町から連れて行かれたし、東京の店で菊次が四五日前に斬られてます。東京のは相手がわかつているし、なんの事はありませんけどね。用心するに越した事は無いんだ。一兩日中に又別の所に兄きに行つてもらうようにしてあります」
その男は、じや又來ますと言つて歸りかけ、硝子窓を細目に開けて下の露路をうかがつていましたが
「ああ、やつぱり來てる。あれですよ」と言うので、立つて僕は覗きました。
その家を出て、ゴタゴタと食物店の並んだ露路を出はずれた角のゴム靴などを賣つている店の軒先に、ちようど前日から降りつづいていたビショビショ雨をさけるようにして立つて、こつちを見ている女が居ます。軒先の蔭になつて顏は半分しか見
前へ
次へ
全388ページ中154ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング