と言つていたのを僕はおぼえています。「同じ負けるにしても、なんとかして、日本が根こそぎ亡びてしまわぬようにしなければならぬ。われわれに出來ることは、それ位の所だ」とも言いました。
そして、父は父らしいやり方で戰爭に協力しました。實に寂しそうな顏をして、しかし、やつぱり父らしく懸命に全力をあげて協力していたようです。それは、僕が眺めても非常に矛盾した姿でした。しかし、それを僕は笑う氣にはなれませんでした。今でも笑う氣にはなれません。人は笑つたらいいと思います。僕は笑えません。
僕は父が終戰の次ぎの月に自刄したと聞いても――悲しんだのは悲しんだのですが、それほど意外な氣はしませんでした。遺書なんか無くても、僕には父の氣持が手に取るようにわかるのです。父は軍人として、國に殉じただけです。父は、生きては居られなかつたのです。
僕という人間は文字通り、この父に育てられ、僕の人間の内容は全部が父の生みつけてくれたものです。僕は、自分の全部で、父を愛しているだけでなく、いま尚、父を信じているのです。まちがつていたのは父ではありません。父以外の力、父にはどうする事も出來なかつた力――それは歴史
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