です。默々として僕を育てただけです。前に言つた通り、表面はただ手荒にボキボキと育てたばかりで、可愛がつているような事を言つたりしたりはしません。しかし、シンから可愛がつてくれました。僕にそれがわかるのです。そして、その事から、死んだ母を、父がホントに愛していたと言うことが、二重に僕にわかるのでした。
父は遂に最後まで、次ぎの妻を迎えませんでした。僕を繼母に附かせるのが可哀そうだと言うような理由ではなく、僕の母を失つて以來、妻を持つなどと言うことが、まるで考えられなかつたようです。そのへんも、實にアッケ無いほど古武士的で、つまり古風きわまるのです。
戰爭については、終始一貫して非戰論者でした。戰爭は、避けられるだけ避けなければならないと言うのです。そのために大佐の時に軍を退かなければならなくなつたと言います。だのに、父ほど軍人らしい軍人はいませんでした。軍をしりぞいた後になつても、物の考え方から日常生活の末々に至るまで、まるで戰陣にのぞんだ軍人そのままの剛直で簡素きわまる生活でした。父は僕を軍人にしたかつたようです。なぜなら、彼の考えでは、軍人こそ人間の中で最もすぐれたものだつたから
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