の返事がアイマイなものですから段々に興味をそそられたらしいのです。Mさんに關係のある事らしいので、本氣で知りたい氣持もあるようです。そのうちに、ブランデイの醉いが出て來て、聞き方がシツコく、からんで來ます。しまいに、「わけを話さなきや、教えてあげない」と言うのです。僕は、かなり永いことガンバッていましたが、遂にしかた無く話す氣になりました。一つには、このままだと、もしかすると死んだMさんにルイを及ぼすかも知れないと氣が附いたためもあります。それに、十が十、この立川さんが當のあの女では無いという確信があるのと、色や戀も相當にしつくして來て、僕から見るとスガレきつたような相手であるために、話しやすい事もありました。それで話しました。話すと言つても、もちろん、あの晩のことをくわしく――僕があなたへの手紙に書いたように細かく具體的に話したのではありません。ただ「出征する前にMさんの引き合わせで逢つた女の人」と言つたふうに、なるべくボカして言いました。
「名がわからないと言うと、そん時、聞かなかつたの?」
「ええ」
「ふうん。……顏はおぼえているんでしよう?」
「よくおぼえて[#「「よくおぼえて」は底本では「よくおぼえて」]いないんです」
「だつて、あんた、その人と逢つたと言うんでしよう?」
「ええ。……でも、空襲中で暗かつたもんですから――」
 すると彼女は變な目をして默つて僕の顏を見つめていましたが、するうち、急にニタニタして
「ああそうか! 逢つたと言うのは、そういう意味なの? へえ! つまり、なんでしよう、この、仲良くなつたと言う――? でしよ?」
 僕は眞つ赤になりました。すると立川さんは目を輝かして嬉しがつてワーッ! と叫ぶのです。
「フッ! いいなあ! そうなのう! Mさんがその人を世話したのね? やるやる、Mさんなら、本氣でそれ位のことやるとも。……なんじやない、もしかするとあんた、そん時まで女を知らなかつたんじやない? それをMさんが、そんな事で出征はさせられないと言うんで、そんなふうにしてやつたんじやないの?」
 まるで何もかも筒拔けみたいなんです。立川さんは、深い附き合いではなかつたと言いながら、Mさんの性質を實に良く知つているようなのです。それとも、同じ芝居や映畫の世界の空氣を吸つて同じ年代を送つた人たち同士の間には、そんな細かい所まで通じ合うものが有
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