かな人間性と言つたようなものを持つていた人で、そのために本能的に進歩的な人だつたし、戰爭嫌いでした。ですから、日本のはじめた戰爭を始終怒り、そしてそのために同胞が、特に青年たちがドンドン死んで行くのを悲しんでいられた。戰局が次第に激しくなつて來るにつれて、酒でも飮んでいなければ、とても耐えきれなかつたのでしよう。醉うと、よく、泣いたり怒つたりしました。
 その時も僕の顏を穴のあくほどシゲシゲと見ていてから、
「それで、それで君、貴島! 君あ、それで出征する氣か?」と、せきこんで言われました。
「ええ」
「ええ? ええだつて? それで、なんともないのかい? 今、こんな戰況の最中に出征するという事は、このなんだぜ、たいがいまあ、なんだよ。知つてるな君あ?」
「知つてます。それでいいんです」
「それでいい? いいか、それで? いや、そうさ、そりや、それでいいのかも知れん。いやいや、ちつともよくは無いけど、もうこうなつたら、どつちみち、出征したつて此處いらにマゴマゴしていたつて、どつちみち、もういけないのかもしれん。だから、それはしかたが無いとして、その童貞……つまり、せつかく男に生れついてだな、このヘタをすると一人前の人間になりきれないままで、ジ・エンドだぞ。それでいいのか君あ?」
「……だつて、しかたが無いですから」
「……しかたが無い? しかたが無いんだと? チェッ! チェッ! チェッ!……そうさ、しかたが無いと言やあ、しかたが無い! バカだ! うん、バカヤロウだよ君あ! いやいや、バカヤロウは君じやない、バカは日本だ! おれたちの、この日本だ! チキショウ! だからよ! なぜ、なぜ、それを君は、もつと早く言わない。もつと早く、なぜ俺に言わないんだ、バカあ!」
 ガツンとテーブルを叩いて怒り出されたのです。それから、ガブガブと強い酒をあふりながら、ワケのわからぬ事を言つて怒つていられましたが、しばらくすると、今度はボロボロ涙をこぼしていられるのです。
 僕は困つてしまつて、どうしてよいかわからず、だまつて腰かけていました。
「……悲しいなあ貴島! 青年は悲しいなあ」
 そう言つて、燈火管制のための蔽いをかけた電燈の、薄暗い光の中で、僕をジッと見られました。以前、新聞などで「新劇の團十郎」と言われたという面長で彫りの深い、それこそどんな人物の性格や心理でも、この顏でなら
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