保のお盆のように丸い顏がボヤーッとしてロウソクの光を受けている。……頭上の眞暗な燒跡に、黒い野獸のように七八人の男たちが鬪つている。聲を立てないのは、そのような事に場馴れている者ばかりである證據だ。仲間同志の爭いに、他の者を卷き込んだり、それを第三者に知られたくないのである。それを私は知つている。それだけに又、そのような鬪爭がどのように凄慘なものであるかも知つている。行く所まで行かなければ、人の制止など絶對に聞くものでは無いのである。……私は床の下から突き上げられるような氣持をおさえつけ、おさえつけしながら坐つていた。
ゲッ! と低く、吐くような聲が一つして、つづいて、ブスッと響く音――着物を通してピストルを發射した音である――がして、足音がドタドタと壕の眞上に迫つた。私も久保も思わず立ちあがり、壕の外に飛び出していた。トタンに、四五間先きから私たちの足元めがけて、サッと懷中電燈の光を投げた者がある。襲つて來た者の一人らしかつた。
その光の輪の中に――壕の入口のすぐ前、私と久保から數歩の所にグタリとなつた貴島勉の片腕を掴んで肩にかけた杉田が、貴島もろともドサリと膝を突いたところだつた。壕の眞上に迫つたと思つた足音はこの二人のものだつたらしい。二人とも無言。一見して貴島の顏に血の氣無く、何か重傷を受けているらしいが、トッサの事で、どこにどんな傷を受けているのかわらない。杉田はあせつて起きあがろうとするが、自身もどこか傷ついているか、足掻きが利かないらしい。向うを見ると、闇の中に圓陣を作つて黒い影が五つ六つ立ちはだかり無言でこちらを見ている。
久保が二三歩寄つて行き
「貴島、どうした、きさま?……」と言つた。
貴島が土氣色の顏を上げて久保を見あげたが何も言わず、言う力が無いようだ。
「久保さん――」と低く言つたのは杉田だつた。
「兄きは、パチンコの玉を食つている。そいから、足をやられた。おい!」
言つて、貴島の身體をゆすつた。貴島の上衣がめくれ、左の腿が現われたが、そこに、ズボンの上から、ほとんど直角に、中型の海軍ナイフが突きささつている。血はズボンの内がわに流れているのだろう、布にもナイフにも赤い色は見えないで、まるで壁にナイフを突き立てでもしたように、何か唐突な恰好に見えた。
それを久保がジッと見おろしていた。それから、しやがんで、ナイフの柄に手をかける
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