ッとしました。
そのあと、なにごとが起きたのか、僕はほとんど憶えていないのです。憶えているのは、僕が無意識にルリさんの身體をうしろから片手で抱えこむようにしたことです。それから、自分の顏をルリさんの首筋のうしろに持つて行つたことです。ワンピースの襟を引きさげるような事もしたようにおぼえています。すこしはだかつたルリさんの背中に顏が觸れました。その背中が、思いがけなくヒヤリと冷たかつた。それだけです。僕はそれだけをするにも、決して亂暴な荒々しい事をしたおばえはありません。スルスルスルと、ほとんど力をこめないで、してしまつたのです。ルリさんは、はじめ、「あつ!」と口の中で叫んだようでしたが、あとは石のように默つてしまつて、僕のするままに委せていました。むしろ、なんだかルリさんの方でそうされるのを迎えているような調子がありました。だつて、僕はそうしながらも、いや今になつて思い出して見ても、自分が進んでそんな事をしたと言うよりも、ルリさんからそうさせられたような感じでした。自分を辯解するために嘘を言つているのでは無いのです。嘘ならもつと僕は上手につきます。嘘をつく氣なら、初めからこんな事は話しません。
氣が附くと、ルリさんの身體が、僕に抱えられたままで不意にグタッとなりました。
「いけない!」と僕は思いました。
急に頭がハッキリして、ルリさんの身體を離しました。ルリさんはすると、グルリと此方を向いて、僕を見つめました。睨んでいるような大きな眼でした。暗い中でそれがハッキリ見えました。からだをガタガタふるわしているようです。僕は恥かしくなりました。自分が小さく小さくなつて行くような氣がしました。そのへんに穴でもあつたら飛びこんでしまいたくなりました。
「すみません!」
僕は口の中で言つたのです。すると、ルリさんが僕を睨みつけながら、喰いしばつた齒の間から、
「き、き、き!」と言いました。貴島と僕の名を言うつもりなのか、昂奮し怒つたあまりの齒がみの音なのか、わかりませんでした。僕は彼女の眼にいすくめられて頭を垂れました。暫く時間がたちました。
「なぜ、なぜ、こんな事を――貴島さん! 貴島さん!」
そう言いました。怒りに燃えた、刺すような聲です。そう言いながら、彼女は、自分の胸のVの所に右手をかけると、ベリリと言わせてワンピースの布を下へ向つて引き裂きました。ベリベリと
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