だな。生活もある。キリキリ舞いをして下界におつこつた。そいで當人は、そんな自分のことはチットも氣が附いていない。あたりまえだと思つている。落ち着いたもんです。つまり、一人前の女としては完全以上に成熟していながら、自分ではそれをすこしも知らず、性的にはまるつきり無知なんですよ。自分の内に虎を飼いながら、それを知らずにいるんだ。それが、いきなり、R劇團のような所に入つた。エロを賣り物にしているような劇團です。劇團員たちの生活も普通の常識から言やあ、とにかくアケッピロゲたようなもんでね。そういう劇團に永く居る者にとつちや、それが馴れつこになつていて、それがエロでもなんでも無くなつている。それがあたりまえなんだ。ところが、ルリ君には、こいつが、ひどく效いちやつた。出しぬけに蜂の巣に叩きこまれたような工合。カーッと虎が目をさまして、あばれ出したらしいんですよ。しかも困まつたことに、今言つた無知のために、當人、何事が起きたか、まるでわからない。ただ、キリキリ舞いをしているうちに、そいつが、妙な風にこんぐらかつたね。一種の、まあ、性的な閉塞症と言うか、恐迫觀念と言うか、性的なことを恐ろしく嫌つて、憎むようになつてしまつたんだ。實は、それは、性的なことを好いていて、そいつを待ち望んでいるのだが、自分でも知らん間にひん曲つてしまつて閉塞した状態なんだけどね。世間には間々あることで、實はそれほど珍らしい例じや無い。とにかく、男から手足にさわられたりするのを恐ろしく嫌がるようになつた。樂屋でも、時によると舞臺に出ていても、男優から裸の肩などにさわられると、いきなりキャーッと悲鳴をあげるし、樂屋便所の節穴などを自分の手でセッセとふさぐなんて事をするし、それでも時々、誰か覗いたと言つては眞青になつて便所から飛び出して來る。すべてがそうなんですよ。しまいに、みんな、奴は氣がすこし變だと言う事になつた。事實、こんな奴がどうにかした拍子に變になることがあるんだ。そうなると、面白いことに、これがガラリとあべこべに色氣ちがいになるんですよ。……まあ、そんなふうでとにかく、やつているうちに、ザコネと來た。で、がまん出來なくなつた。そこへ何か、起きたらしい。どつかの男から何かされたらしいんですよ。………もう死んだ方がましだなんて、口走つていましたよ。いや、わしは時々R劇團へ仕事かたがた顏出しをするもんだか
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