代 さう? そんなもんかねえ、フン。よりちやん、もう一つ。
より 冗談言つちやいけないよ、留さん! やつぱし、なんだらう、妹さんの行つた先も、やつぱし、こんな風な飲屋かなんかだろ?
留吉 小さい料理屋だよ。何か、おかしなうちだ。
より (香代に酒を持つて行つてやりながら)んぢや駄目だよ。一度前借をしてこんな世界に飛込んだが最後、二年や三年で抜けられやしないんだから。私達を御覧よ、借金はグイグイふえる一方だから。
留吉 そいつは、お前達がチヤンと、しまつてやらねえからだ。
より 田地を買戻すなんか後廻しにして、その妹さんの方を先きにおしよ。
留吉 とにかく一刻も早く国へ帰りてえよ。俺が帰りや一切合切、片附くんだ。
香代 その、あとの百円、私があげようか?
留吉 ……なんだつて? 百円?
香代 百円あげるから、お前さん、そこに坐つて、私の足の裏を舐める?
留吉 ……?
香代 百円だよ。舐めるの?
より 香代ちやん! お前――。
香代 アツハハハ、ハハハ!
留吉 なんだよ? どうしたんだ?
香代 『人間の皮をかぶつた』か。うまく、かぶつたもんねえ! アツハハハ、ハハハ! あゝ、おかしい!
よ
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