あんたの?
磯 オホホホ。まあね、近藤さんからは、金は借りてゐますよ。(平気を装つてはゐるが少し顔色が変つてゐる)
辰造 さう白つぱくれるなよ。(志水が着物の裾を引つぱるので)なんだよ? なあに、まだ早えよ。お神さん、今頃は大きに、香代ちやんと近藤とがどつかで逢つてゐるかもわからねえぜ。
磯 (より子に)さう言やあ、香代ちやん少し遅いねえ?
より (相手の顔色を窺ひながら)納屋の方の帳面を一わたり済まして来ると言つてましたから……。
磯 さう。(少し無理をして笑つて)惚れぬ女郎が惚れたと言へば、客は来もせで来ると言ふつて文句が有るぢやありませんか。アハハ。商売ですよ。(香代が外から戻つて来る)
香代 たゞ今。おや、志水さんに辰さん、やつてるのね。今夜は寄合ひがあるんぢやない?
磯 馬鹿に遅いぢやないか。
香代 掛けを取りに行つた私を掴まへて、からかつちや遊ぶ気でゐるんですからねえ。スゲ無くすれば、金はよこしてくれないし――。
磯 今頃迄納屋を廻つてゐたの?
香代 (相手の語調が少し変なのでフイと顔を見て)……え?
磯 いえね、どつか、他へも廻つてゐたのかと思つてさ。
香代 なんですの?
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