なかから、とくにアメリカ当局や南鮮側を有罪の方へ指向するものの多くをえらびだしてならべている。八百屋の店さきから乞食が大根を一本ぬすんだという事件にしても、それを見た人、聞いた人の認識や報告は、それぞれにかなり食いちがうものです。朝鮮戦争のような、大がかりで複雑な事件に関する公文書や報道は、たがいに矛盾したり撞着したりすることがひじょうに多い。それはある程度まで仕方のないことであって、それだから公文書や報道全部が悪意によるフレーム・アップ――たくらみだと断定される理由にはならないと思います。
 もちろん私は、朝鮮戦争についての、アメリカ当局の発表が真実であるとの証明を持っていませんし真実であるとは思っていません。この本を読んでも、真実はその反対であるとも思いえませんでした。それは私が故意に意地悪をしようと思ったためではなく、ただ謙遜に真実を知りたいと思っただけのためです。そして、あなたに言わせると私は「目がさめなかった」のです。「そんな者は白痴というのであろう」と、あなたは言っていられます。じつに私は情ない気がしました。
 私はかなり愚かな人間です。それは十分知っていますが、人から白痴
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