戦争反対論者がまるでいないとは思われません。しかし大多数はいま、一時的戦術的に反対しているのだと私は見ます。つまり彼らの現在の基本方針は「反米」におかれている。そして日本はいまアメリカの戦力に組みこまれかけている。しかもその戦力は仮想敵としてのソビエット圏諸国の方へむけられている。
したがっていま、日本国内で反戦と再軍備反対をとなえて、大衆をその方へ持っていけば、もっともよく反米と援ソの効果をあげることができる。――そういう反戦論者や再軍備反対論者がひじょうに多いと私は見ます。そういう人びとは、情勢がさらにかわれば、または逆転すれば、反対はしなくなるだろうし、逆《ぎゃく》に主戦論者になったり軍備賛成者になるだろうと思われます。戦略戦術による百八十度転換というやつです。共産主義者たちは、これがなかなかうまい。実例は無数にあるが、なかでもあざやかだったのは、第二次大戦中、ソビエットが最初ナチス・ドイツと敵対していたのが、中途で結び、さらに敵対するにいたった姿だとか、終戦直前の日本にたいする態度などで、われわれはこれを忘れることができません。
それほどあざやかとは言えないが、日本の共産主
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