、そいで、嬢様にひでえ苦労ばかけていることを知っていやがるです。そいで一所懸命になる。はあ、来年あたりからは、麦畑の二段や三段、皆の飯米ぐれえのことはチャンと小僧達がやらかしましょうぜ。みんな、もう寝たかね?
お妙 へえ、寝ました。咲ちゃだけが――。
段六 おおそうだ、喋っていて、つい忘れていた。どれどれ、はあまだ悪そうだなあ、ハシカてえもんは子供の厄だてえが、よしよし、そうれ、今日はお前に飴ば買うて来てやったかんな、あんでも名代の子育て飴だていう、これ食って早く元気になれよ、嬢様に苦労ばかけるな、……ああ、まだ、えれえ額が熱いわ。よしよし。……ああれ、嬢様あんた泣いてるな?
お妙 ううん そうじゃないの……。
段六 涙そんねえにこぼしていて、そうじゃねえていう法あんめえ。……無理もねえ、あんたまだ、そんねえに若えし、そんねえにやさしいお人だ。そこんとこへ持ってきて苦労が苦労だ、無理ねえて。
お妙 いえ、咲ちゃが泣くのでつい悲しくなったまで、何でもないの。さあ段六さん、あがって休んで――。
段六 へい、へい。……仙太公からことづかって来た金も、借りの払いやなにかであらかたなくなったし、
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