に押しかぶせて)うう、百姓は弱え、受身だ、弱えとまたお前言う気だろが? 知ってら! それがどうしたてや※[#感嘆符疑問符、1−8−78] おら達今朝っからここへ坐って膝もすりむけたし、通る百姓の一人づつに拝み続けだぞ! (再び下から叩きの響き)ううっ! あっ! (両手で顔を押える)……ああ段六公、おら帰ろうてや、連れてってくれ。……済まねえのう。
段六 済むも済まねえもねえて。まわり合せだと諦《あき》らめるだよ。さあ帰るべ。
仙太 いや、もう少し……、諦らめられねえて。もう少し、もう少し待ってくれ。おら、おら……。
[#ここから2字下げ]
(鳥追と馬方が土手の向うへ下って行き、姿を消す。叩きの物音。そこへ左手から中年過ぎの百姓の女房がフロシキに包んだヘギを抱えてヨロヨロするくらいにあわてて小走りに出て来る)
[#ここで字下げ終わり]
女房 お! まだ間に合うた。あああ、何てまあ仙衛ムどんなあ! むげえこんだ! むげえこんだてよ! (土手の端まで走って行って仕置場を見下して左右へウロウロ走り廻った末に仙太を認めて)あ、仙さんけ! 兄さんは、まあ何てえ気の毒なことよなあ。
段六 滝さんとこ
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